今さらだけど知っておきたい、なぜクラウドを使うのか - その1


低コストで使いたいだけ利用できる、中小企業の味方


劇的な進化が続くIT(情報技術)では、クラウドの活用が当たり前になっています。企業のITシステムでも利用が広がっています。 でも、クラウドとは実際のところ、何なのでしょうか。そして、中小企業のITシステムに、どんなメリットがあるのでしょうか。 そこで、この記事では、クラウドの特徴をあらためて、わかりやすく解説します。 そして、中小企業のITシステムがどんな可能性を秘めているのか、探っていきます。

もう当たり前になっているクラウド

じつは、クラウドは、スマートフォンやWebのアプリで当たり前のように使われています。 たとえば、身近なGmailとGoogleカレンダー、LINEやFacebook・TwitterなどのSNS、それに、経理で使っている弥生会計や勘定奉行もクラウドになっています。 このようなアプリには、いろいろなメリットがあります。パソコンやスマートフォンからインターネット経由で操作できるので、アプリに合わせてパソコンなどを用意する必要はありません。それに、実際のデータはインターネットの向こう側に保存されています。手元のパソコンやスマートフォンが壊れてもデータを失うことはありません。買い替えた時も、アプリの再インストールやデータの移行は、ほとんど必要ありません※。インターネットの向こう側にあるコンピュータなのでシステム運用も不要です。 こうしたメリットは、クラウドならではのモノです。

※そんなにうまくできていないアプリもあります。スマホを買い替えたら、アプリの再インストールが必要です。LINEは、トーク履歴の引継ぎに、ちょっと手間がかかります。

テクノロジーの進化

このような進化は、馬車と自動車、宅配便にたとえることができます。 馬車は、人間が運ぶよりは強力ですが、自動車と比べれば、スピードがおそいし、運搬量も限られています。 自動車の登場でそれが大きく変わりました。スピードも速くなり、運搬量も大きく増えましたよね。でも、自社で自動車を保有していると、自分で運転・整備が必要です。ドライバーも雇わなければいけません。トラックを資産として計上する必要もあります。 そこで、現在は宅配便などの運送サービスを使うのが当たり前になっています。自分で運転・整備は不要です。使いたい時に使いたいだけサービスとして利用すれば良いのです。 あなたの会社では、宅配便と同じレベルで効率よく自動車を運用できるでしょうか?

実は、クラウドも同じです。自社でコンピュータを持つよりも、クラウドを利用するほうが圧倒的に効率が良いのです。


クラウドのカギを握る「エミュレータ」

では、クラウドとは一体何でしょうか。そこでヒントになるのが、ゲーム機の「バーチャル・コンソール」です。最近のゲーム機は、昔のゲーム機のソフトがそのまま動きます。これは、最新のゲーム機で古いゲーム機をソフトウェアで再現して、その中で、昔のソフトを動かしているのです。たとえば、任天堂の3DSやSwitchでは、スーパーファミコンやゲームボーイのゲームが、バーチャルコンソールとして遊べます。最新のゲーム機のほうが高性能なので、その中で昔のゲーム機を再現できるんですね。


このような技術を「エミュレータ」と呼びます。ウィキペディアでは、バーチャルコンソールのことを次のように説明しています。

バーチャルコンソール 任天堂のゲーム機は、ハードウェア面において基本的に一世代前の機種との互換性しか持ち合わせていないため、ソフトウェア(エミュレータ)を用いて仮想的(バーチャル)にゲーム機(コンソール)を再現して動作させている。 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

つまり、仮想的にゲーム機を再現して(エミュレータ)、ゲームソフトを動作させるのが「バーチャルコンソール」なのです。

業務システムで活用される仮想化技術

業務システムでも、このエミュレータのような技術を使っています。厳密には、「エミュレータ」ではなく「仮想化技術」(バーチャライゼーション)と呼んでいます。仮想化技術には、いくつかの種類があり、そのうちの一つの形態が「エミュレータ」です。最近は、「コンテナ」という仮想化技術が主流になってきました。 業務用ITシステムに使われるコンピュータを、「サーバー」と呼んでいます。コンピュータのサーバーは、ネットワーク経由でいろいろな処理(サービス)を行ってくれるコンピュータのことです。

コーヒーサーバーは、コーヒーを提供してくれます。ウォーターサーバーは、おいしい水を提供してくれます。それとよく似た関係です。 Webサイトを提供するサーバーが「Webサーバー」で、ファイルを保管してくれるのが「ファイルサーバー」、ネットワークを経由してプリンタで印刷できるのが「プリントサーバー」です。


最近のサーバーは高性能なので、仮想化を使って、ひとつの物理サーバーで、バーチャルなサーバーを複数実行できます。複数の物理サーバーを1台のバーチャルなサーバーに見せかけることもできるんです。 そのおかげで、1台のサーバーで複数の業務システムを提供したり、複数の物理サーバーを束ねて、ハードウェアの一部が故障しても、自動的にそこを切り離すこともできます。



今までのIT環境の姿

ここで、今までのIT環境の姿を振り返ってみましょう。

物理サーバーであれば、購入したり設置するだけで数日から数週間かかります。コスト面でも、最小で1台5万円くらい。資産として5年償却する必要がありますが、1年後には、もっと性能の高い機種が出てしまい、せっかく購入したサーバーは陳腐化する可能性があります。

システム運用の面では、システム担当者による多くの作業が必要になります。OSやソフトウェアのアップデートも、継続して行わなければなりませんし。信頼性を確保するためには、無停電装置などを設置する費用も必要です。

それに、業務に合わせてサーバーを増強したいと思っても、また調達に数日かかりますし、どこからでも利用できるようにするには、アクセスするための設備を別途用意しなければなりません。



最近は、人材の確保が大きな課題になっていますから、このようなIT環境を自社で用意するのも大変です。


使いたい時に使いたいだけ利用できるクラウドサービス

そこで、使われいるのが「クラウドサービス」です。クラウドは、コンピュータの宅配サービスとして、使いたい時に使いたいだけ低コストで利用できるサービスです。最新のゲーム機でバーチャルコンソールを使って昔のゲームが遊べるように、バーチャルなサーバーをインターネット経由で呼び出して、すぐに利用できます。

主なクラウドサービスに、「AWS」(Amazon Web Services)、マイクロソフトの「Azure」、「Google Cloud」があります。GmailやGoogleカレンダーは、このGoogle Cloudの一部です。



クラウドには、次のようなメリットがあります。

まず導入面では、導入期間を圧倒的に短縮できます。ほんの数秒でバーチャルなサーバーを起動できるのです。そして、その価格も大幅に安くなっています。AWSの場合、最小構成のバーチャルサーバーなら12ヶ月無料で、それ以降は1時間あたり0.0068US$(1ドル100円として0.6円)。1年間なら5256円です※。 このくらい手軽に利用できると、普段は最小限のシステム構成にして、アクセスや処理が増えてきたときだけ、コンピュータの増強が可能になります。不要になれば、そのバーチャルなサーバーを簡単に破棄できます。もちろん、インターネット経由で、どこからでも利用できます。

システム運用面でも、多くのメリットがあります。運用業務を削減し、運用コストを押さえることができます。また、信頼性も向上できますし、高いセキュリティを確保できます。さらに、購入したサーバーの陳腐化を避けられます。数年に一度、機器を入れ替えなくても、クラウドサービス側が必要な機器を調達して、故障する前に交換してくれます。



※価格は変動する可能性があります。AWSの利用料は、これまで何度か値下げされてきましたが、それでも低価格です。


クラウドの種類

じつは、クラウドサービスには、次のようにいくつかの種類があります。結構、ややこしいですね。




「IaaS」は、イアースとかアイアースと呼びます。Infrastructure as a Service(インフラストラクチャ アズ ア サービス)の略で、サーバーやOS・ミドルウェアというアプリケーションの実行環境だけを提供するクラウドサービスです。実行するアプリケーションは、自分たちで開発するか、一般的なパッケージアプリケーションを導入することになります。すでにアプリケーションを持っていて、それをクラウド上でも動作させらるなら、これが簡単ですね。でも、クラウド用になっていないと、改修したり再購入が必要になります。

「PaaS」は、パースと読みます。Platform as a Service(プラットフォーム アズ ア サービス)の略で、アプリケーションをクラウド上で開発するツールと実行環境を提供します。新しくクラウド用システムを開発する場合には便利ですね。でも、エンジニアを確保する必要がありますし、開発コストもかかります。

「SaaS」は、サースと読みます。Software as a Service(ソフトウェア アズ ア サービス)の略で、完成したアプリケーションをクラウドサービスとして提供します。


冒頭に紹介したGmailやLINEなどのアプリケーションは、このSaaSに分類できます。そのために、ユーザーが増えたりアクセスが集中しても、サービスを中断することなく処理能力を増強したり、機能を強化することができるんです。

クラウドを利用すれば、自社で用意するIT環境とは、まったく違った世界が広がっています。

中小企業で、これをどのように活用するか、次回の記事で見ていきましょう。


参考資料

バーチャルコンソール - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%AB エミュレータ (コンピュータ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF_(%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF) サーバ - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%90 IaaS(HaaS)とは - IT用語辞典 e-Words http://e-words.jp/w/IaaS.html PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)とは - IT用語辞典 e-Words http://e-words.jp/w/PaaS.html SaaS(サービスとしてのソフトウェア)とは - IT用語辞典 e-Words http://e-words.jp/w/SaaS.html

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